# --- Kifu for Windows V6.34 棋譜ファイル --- 開始日時:2010/10/11 11:00 終了日時:2010/10/11 11:58 棋戦:第39回ファンクラブカップ準決勝 持ち時間:0時間15分 消費時間:93▲15△15 場所:新宿文化センター 手合割:平手   先手:中井広恵六段 後手:渡部愛ツアー女子プロ 手数----指手-- *ファンクラブカップ準決勝 *中井広恵六段−渡部愛ツアー女子プロ * *振り駒の結果歩が3枚で中井六段の先手と決まった。対局開始は11時。持ち時間は各15分、切れたら1手40秒以内。 * *(棋譜・コメント入力=蝶結) 1 2六歩(27) 2 3四歩(33) 3 7六歩(77) *中井広恵六段は1969年6月24日生まれ、北海道稚内市出身。LPSA番号 7。1986年、第12期女流名人位戦(報知新聞社主催)で初タイトル獲得。1993年に第7期竜王戦(読売新聞社主催)で男性棋士から公式戦初勝利、2003年テレビ棋戦でA級棋士を破るなど女流棋界のパイオニアとして数々の実績を持つ。居飛車党で攻守にバランスのとれた棋風、得意戦法は矢倉。タイトル獲得は女流名人位9(クイーン名人)、女流王将4、女流王位3、倉敷藤花3の合計19期。棋戦優勝は大和証券杯女流最強戦2回、レディースオープントーナメント4、鹿島杯3の合計9回。1986年 稚内市民栄誉賞、2008年 第3回さいたま輝き荻野吟子賞(個人)など受賞も多数。 4 4四歩(43) *渡部愛ツアー女子プロは1993年6月26日生まれ、北海道帯広市出身。LPSAツアーライセンス番号 1。血液型はB型。8歳の頃に将棋を覚え、得意戦法は振り飛車。アマ時代の主な戦績として第40期女流アマ名人戦準優勝、第46期赤旗名人戦全国大会予選通過、第1回女子アマ王位戦第3位などがある。目標はズバリ「女流タイトル獲得」。 5 2五歩(26) 6 3三角(22) 7 4八銀(39) *この両者は8月の日レスインビテーションカップ・準々決勝で対戦があり、矢倉の大熱戦を178手で中井六段が制している。この師弟対決なら、今日もそれ以上の熱戦を繰り広げてくれそうだ。 8 8四歩(83) 9 7八銀(79) *中井六段の今期成績は14勝2敗(0.875)。女流棋士公式戦連勝記録となる19連勝を含め、勝利数・勝率で現在女流部門のトップ(勝率は里見女流名人・倉敷藤花と同率)と目下絶好調。先日のマイナビ女子オープン本戦1回戦・村田初段戦も勝利し、その勢いはとどまるところを知らない。 10 2二銀(31) *渡部TJPは予選Aブロックで山下五段・蛸島五段・島井初段の3名に勝利し、ブロック最多勝ち抜き者としてこの準決勝に進出。今年は公認棋戦を通じて安定した成績を残しているが、1DAYトーナメントでは7月マンデーカップの準優勝が最高。そろそろ優勝の実績をもうひとつ積み重ねたい。 11 5六歩(57) *中井六段は予選Bブロックで中倉宏美二段を破って最終勝ち抜き者としてここへ駒を進めた。1DAYトーナメントでも抜群の勝率・決勝進出率を誇っており、ここを通過すると一気に頂上が見えてくる。 12 8五歩(84) 13 7七銀(78) 14 4二角(33) 15 7八金(69) 16 3三銀(22) 17 7九角(88) 18 5二金(61) *後手は角道を止めて何が何でも矢倉にしようという無理矢理矢倉。田中寅彦九段が得意にしている。 *元々は得意としていた振り飛車を封印し、今は居飛車主体で役を組み立てる。矢倉ひとつでもあらゆる変化に対応できなければならないが、渡部TJPは近い将来それをやってのけるだろう、なぜなら彼女は千の仮面を持つ少女なのだから。 19 6九玉(59) 20 3二金(41) 21 3六歩(37) *ここまでほぼノータイムできたが、この手をみて初めて渡部TJPが手を止める。 22 4三金(52) 23 3五歩(36) 24 同 歩(34) 25 同 角(79) *中井六段は紺のジャケット&スカート、中はフリルが目立つ白のドレスシャツ。秋めいた表の風景にぴったりの落ち着きは、ミドルエイジに大いに参考になる着こなしだ。 26 4一玉(51) *渡部TJPは対局場に、勉学と青春の風を送り込む制服姿。傍らにはKas Kitsonのミニバッグが見える。冬服バージョンで、北の寒さも厳しい局面もしっかり乗り越えられる。 27 3七銀(48) *いったん4九の金に触ってから、銀をそっと立ち上げた。 28 7二銀(71) *師匠が弟子に技術を教え導き、ともに成長してゆく物語は昔から数多く描かれてきている。「ガラスの仮面」は何の取り柄もなかった少女北島マヤが、名女優月影千草に見出され、眠れる演劇への才能を開花させ伝説の舞台へと向かってゆく姿を描き、足掛け35年にわたり連載され今なお続く大長編人気マンガだ。 29 3六銀(37) 30 8三銀(72) 31 5五歩(56) *機敏な歩突き。4二の角が使いづらくなった。 * *※「5筋の位を取られて、角が使えなくなってしまったのが想像以上に大きかったです」(渡部TJP) 32 8四銀(83) 33 6八角(35) 34 3四歩打 *あの銀に好き勝手に暴れられてはたまらない。舞台には、台本があり、アドリブやオーバーな演技は許されないのだ。 35 3五歩打 *それでもこじ開けに行く。こうして自分は、スターの座に就いたのだ。 *残り時間は中井7分、渡部6分。 36 3一玉(41) 37 3四歩(35) 38 同 銀(33) 39 3七桂(29) *自然な活用。次に▲3五歩と打てれば、銀が召しとれる。 * *※後手にもう1歩あれば、3五の地点で銀交換した後に△3六歩の桂取りがあるが、その一歩がない。「なので一応成立しているかな、と思い進めました」(中井六段) 40 1五角(42) *大胆な装置の転換。主役を食ってしまうほどの演技が、舞台あらしとおそれられる。枠におさまらないスケールこそ女優の命。 41 3八金(49) 42 3五歩打 *ひたすらに読みにふける。伝記で有名なヘレン・ケラーと教師サリヴァンを描く舞台「奇跡の人」。初演でケラー役を演じた女優パティ・デュークは、オーディションでヘレン・ケラーになりきるようにと指示を受け、火災報知機のベルを鳴らすというテストにまったく振り向かず演技を続け、見事その大役を射止めたという。今、目の前で戦っているふたりも、同じ状況でも盤上没我の姿勢を貫くに違いない。 43 同 銀(36) 44 同 銀(34) 45 同 角(68) 46 3六銀打 47 2六角(35) *鋭い手つきで角をぶつける。伝説の名女優は、暗闇の中からぬっと出す手のみで、舞台に恐怖と緊張感をもたらす演技ができる。 48 3七銀(36) *この手から渡部TJPは秒読みに。 49 同 角(26) *この手より両者秒読みに。 50 同 角成(15) 51 同 金(38) 52 3九角打 *やや後手の棒銀は立ち遅れている印象。ここからの巻き返しは腕の見せ所だ。ひとり舞台では演技次第で、女海賊にも女子高生にも変身できる。 53 3八飛(28) 54 5七角成(39) 55 6八銀打 56 5六馬(57) 57 4六金(37) *叩きつけるような激しい手つきで金を出る。忘れられた荒野で、闘争本能をむき出しにする狼のように牙をむく。 58 3四馬(56) 59 6一角打 60 9五銀(84) *こちらから開拓しようとする。のびのびと広い十勝平野で育てられた王女の微笑みは、冬の雪さえも溶かす。 61 2四歩(25) 62 同 歩(23) 63 2三歩打 *この垂れ歩が厳しい。守りの金が集中砲火を浴びそうだ。 64 3三歩打 65 2二銀打 *より露骨に、激しく感情をむき出しにする。 66 同 金(32) 67 同 歩成(23) 68 同 玉(31) *ついに玉はさまよいだす。嵐が丘でキャサリンはヒースクリフの名を叫び続ける 69 3五金(46) *北の大地で鍛えられた氷の王女にも優しい心はあるが、真剣勝負の場ではその氷の微笑で盤面を、そして相手を凍りつかせる。 70 4九銀打 71 3四金(35) *優勢になってからもどんどん踏み込む。この度胸が元祖天才少女の本領。彼女の前では、こうつぶやくしかないのだろうか。「恐ろしい子!」 72 同 金(43) 73 同 角成(61) 74 同 歩(33) 75 同 飛(38) *現局面は攻めが続きそうで先手が優勢だ。 76 5八角打 77 7九玉(69) *今日はファンクラブ「Minerva」の会員のみなさまが客席から、対局の行方をじっと見守る。この大勢のファンこそ、女流棋界にとって紫のバラの人。 78 8六歩(85) 79 同 歩(87) 80 8七歩打 *攻めの姿勢を取り続ける。ここであきらめてはいけない。一度陰謀で第一線から引きずり下されても、北島マヤは日本演劇協会最優秀演技賞を獲得し、紅天女候補に返り咲いた。 81 同 金(78) 82 8六銀(95) 83 同 銀(77) 84 9五桂打 85 同 銀(86) 86 8七飛成(82) 87 2三歩打 *「彼女をアップにするんだ!」という監督の声が飛ぶ。今スクリーンには、中井六段のズームアップ。 88 同 玉(22) 89 3五桂打 *この舞台はまもなく終幕を迎えようとしている。次は伝説の舞台「紅天女」の幕開けだ。 90 3四玉(23) 91 4三角打 92 3五玉(34) 93 4六銀打 *「負けました」と渡部TJPが最後のセリフを告げ、静かにカーテンは下ろされた。終局時間は11時58分。消費時間は中井15分、渡部15分。以下△2六玉に▲1六角成△3六玉▲3七金まで。勝った中井六段は15時からの決勝で石橋幸緒天河と対戦する。 94 投了 まで93手で先手の勝ち