# ---- Kifu for Windows V6.29 棋譜ファイル ---- 開始日時:2009/09/26 10:15 終了日時:2009/09/26 11:40 棋戦:第3回日レス杯準々決勝 持ち時間:0時間40分 消費時間:97▲40△40 場所:東京・汐留メディアタワー 手合割:平手   先手:成田弥穂アマ 後手:中井広恵天河 手数----指手-- *第3回日レスインビテーションカップ準々決勝。中井広恵天河に女子アマ王位の成田弥穂さんが挑む。今年2月から行われた第1回天河戦決勝3番勝負の再戦でもある。そのときは中井が貫録を示して2連勝した。 *持ち時間はチェスクロック使用で各40分、秒読みは60秒。対局場は東京都港区の「汐留メディアタワー・アネックス」。対局開始は10時15分。 *事前に行われた振り駒はと金が3枚で成田さんの先手に決まった。 * *(棋譜・コメント入力=桜木) 1 7六歩(77) *大庭美夏女流1級の合図で「お願いします」と一礼。ひと呼吸あとに成田さんはゆっくりと角道を開けた。 2 3四歩(33) *準決勝進出の8人が勢ぞろいして全4局が一斉に行われている。対局は公開されていて、お客さんが静かに見守っている。 *別室では片上大輔六段による大盤解説会も開かれる。 3 6六歩(67) *「汐留メディアタワー」は共同通信社のビル。都心なので、大きな窓からは巨大なビル群が見渡せる。 4 8四歩(83) *中井広恵(なかい・ひろえ)天河は1969年6月24日生まれ、北海道稚内市出身。81年、第6回小学生名人戦準優勝。81年4月に11歳10カ月(当時の最年少記録)で女流2級としてプロ入り。83年奨励会に入会し、2級まで昇級(90年退会)。2002年女流六段。タイトル獲得は女流名人9期、女流王将4期、女流王位3期、倉敷藤花3期の計19期。棋戦優勝はレディースオープントーナメント4、鹿島杯3。LPSAの代表理事の要職を務める。夫は植山悦行七段、女児3人を設ける。著書「鏡花水月」は第17回将棋ペンクラブ大賞に輝いた。 5 6八銀(79) *成田弥穂(なりた・みほ)さんは宮城県在住の中学3年生。趣味はピアノ・空手(二段)。得意科目は数学。 *渡部愛ツアー女子プロ、小野ゆかりアマと同じく、学校の制服姿で本局にのぞんでいる。 6 6二銀(71) *中井天河は昨年度の第2回日レスインビテーションカップの優勝者。本棋戦はシードで本局が初登場だ。 *今年3月に第2回大和証券杯女流最強戦で上田初美二段を降して優勝している。長く女流棋界のトップクラスを走り続けている。 7 5八飛(28) *本局の成田さんはゴキゲン中飛車ではなく、角道を止めた中飛車に。 8 5四歩(53) 9 4八玉(59) *成田さんは第2回全国学生倉敷王将戦低学年の部3位、第5回全国小学生倉敷王将戦高学年の部3位(準決勝では、現在奨励会三段の阿部光瑠君に敗れた)、第28回・第29回の中学生選抜選手権女子の部優勝、第38回女流アマ名人戦準優勝など輝かしい実績がある。 10 4二玉(51) 11 3八玉(48) *成田さんは昨年度に行われた天河戦で船戸陽子二段、中倉宏美二段、中倉彰子初段、北尾まどか初段をなで切りにして決勝3番勝負に進出した。決勝では中井天河に0−2で敗れたものの、その活躍と実力は大きな話題を呼んだ。 *本棋戦は予選で松尾香織初段、島井咲緒里初段を連破しての堂々の勝ち上がり。 *今年は第3回マイナビーオープンにも出場、野田沢彩乃女流1級を破っている。 12 3二玉(42) *対局開始前、大盤解説会場での開会式で選手の抱負が述べられた。中井は「成田さんとは天河戦に続いての対戦です。強いこと、年齢に似合わない将棋を指すことはよくわかっています」。成田さんは「自分の力を出し切って、いい将棋が指せればと思います」。 *また石橋女流王位が「どうしてかは言いにくいのですが、成田さんを応援しています。頑張ってください」とあいさつし会場は笑いに包まれた。中井は苦笑い。 13 2八玉(38) 14 5二金(61) *中井は自然な駒組み。まずは舟囲いを完成させた。△5三銀〜△3三角と進めれば持久戦。 15 3八銀(39) *成田さんは穴熊ではなく、美濃囲いを愛用している。 16 4二銀(31) *中井は△4二銀。急戦含みの構え。 17 6七銀(68) 18 1四歩(13) 19 1六歩(17) 20 8五歩(84) 21 7七角(88) *飛車先を角で受けるのが振り飛車の基本。 22 7四歩(73) 23 5六歩(57) 24 6四歩(63) *△6五歩から角交換を狙う。7七角がいなくなれば△8六歩▲同歩△同飛と飛車先を突破できる。 25 7八金(69) *成田さんは手堅く金を上がった。 26 5三銀(62) *菱形の舟囲い。実戦に現れることは少ないが、昔からある駒組み。 *この形の経験や知識が少ないと見て、成田さんを試しているのかもしれない。 27 4六歩(47) *あわてて自分から動かず、じっと待つのが振り飛車の呼吸。 28 7二飛(82) *7筋に狙いをつける。 29 7九金(78) *成田さんは数分考えて金を引いた。△7五歩▲同歩△同飛に▲7八飛と迎え撃つ狙い。大山康晴十五世名人を彷彿とさせる指し回し。中学生とは思えない落ち着きぶりだ。 30 6五歩(64) *少考で△6五歩。早くも中井天河が仕掛けた。 *中井天河は明るいグリーン系のワンピース姿。ハンカチを口もとに当てて考えている。 31 同 歩(66) *成田さんは慎重に時間を使って▲6五同歩と応じる。最初にぶつかった歩は取るのが基本。 32 7七角成(22) 33 同 桂(89) *角を換えた中井天河。どう攻めをつなげるのか。 34 2二角打 *まずは桂取りの自陣角。中井天河は着手して席をはずした。 35 7八飛(58) *金で受ける手も自然だが、成田さんは飛車を回る。 36 7五歩(74) *攻めを継続。歩を手にすれば△6六歩がある。 37 同 歩(76) 38 同 飛(72) 39 7六歩打 40 7二飛(75) 41 6八金(79) 42 6六歩打 *狙いの利かし。 43 5八銀(67) *11時になろうとしている。持ち時間各40分のうち、消費時間は中井21分、成田25分。 44 5五歩(54) *△7六飛という自然な手があったが力をためた。 45 5七銀(58) 46 7六飛(72) *ここで飛車を走った。後手は△8六歩▲同歩△同飛や、飛車を引いて△7六歩など攻めには困らない格好。 *成田さん、どうさばくか。 47 8二角打 *堂々と角を打って手を渡す。 48 8六歩(85) 49 同 歩(87) 50 同 飛(76) *角に当たっているので飛車の成り込みは確実。 51 9一角成(82) *ともかく成田さんが先に香得となった。 52 8九飛成(86) *次に△6七歩成がある。▲6七同金は7八の飛車がタダ。 53 7九歩打 *しっかり△6七歩成を受けた。自分では「攻め将棋」という成田さんだが、受けも強い。 *△8七歩などは▲8五桂で一気にさばかれるかもしれない。 54 7六歩打 *桂を取りにいく。ただすぐに△7七歩成▲同飛とするのは振り飛車も軽くなる。一手一手が難しい。 55 5五歩(56) *本筋の指し手が続いて、局面のバランスが取れている。 *成田さんは残り9分、中井天河は残り10分。 *対局場には選手に観戦者とかなりの人数だが静まりかえっている。時折チェスクロの電子音が響く。 56 4四銀(53) *▲5四香などの直接手を警戒しつつ、中井天河もじっと力をためる。 57 5四歩(55) *あわてない成田さん。静かにスッと突き出した。 58 7七歩成(76) *ようやく桂を取った。これで駒の損得はなくなった。 59 同 飛(78) 60 7三歩打 *じっと歩。飛車と馬の利きを同時に止めている。 61 8二歩打 *短考で歩を打った。着実な攻めだがこの瞬間は駒の働きが悪く怖いところ。成田さんは度胸もよい。 62 9九龍(89) 63 8一歩成(82) 64 8八龍(99) *にじり寄る。次は△5五香がある。 *残り時間は両者2分ほど。 65 7三飛成(77) *気にせず竜を作る。 66 5五香打 *狙いの香打ち。6八金が浮いてしまうので銀は逃げられない。▲7八金は△同龍〜△5七香成や△5七香成〜△6七歩成と踏み込んでくるかもしれない。 67 6四桂打 *攻め合いに。△5七香成▲同金は、駒が使えるのでむしろ歓迎という姿勢だろう。 68 5一金(52) 69 4五歩(46) *着実な攻め。△4四銀が動くと▲5三歩成がある。成田さんがリードしたか。 70 同 銀(44) *秒を読まれながらも、中井は歩を払った。 71 5三歩成(54) *実に大きなと金。こうなってみると2二のカベ角が痛い。 72 同 銀(42) 73 同 龍(73) *成田さんの銀得となった。 74 4二金(51) 75 6二龍(53) 76 4四角(22) *働いていない角を竜取りで活用する一石二鳥の着手。1筋にも利かせて将来の端攻めも楽しみだ。 77 5三歩打 78 5七香成(55) *▲5七同金は△4八銀だろう。△4四角がいるので先手はせまい。 79 5二銀打 *鋭い。成香を放置して攻め合いに出る。 80 3一金(41) *▲4一銀不成を許しては負け。辛抱する中井天河。 81 5一銀(52) *銀不成で手を渡す。この手がどれだけ厳しいか。 82 6八龍(88) *チェスクロックの秒読みの中、意を決したように金を取った。 83 4二銀成(51) *先手玉はすぐにはなかなか詰まないが、次に△4六桂などで即受けなし。成田さん、寄せきることができるか。 84 同 金(31) 85 4一金打 *▲5二桂成では詰めろになっていない。成田さんは首をかしげながら金を放り込んだ。この手自体は▲4二龍までの詰めろ。△2二玉だろうか。 * *※「すごい手でしたね」と局後の大盤解説場で片上六段。「▲4一金に驚いてしまって…受け間違えてしまいましたか」と中井天河。続けて「△5二歩と受けるのでしたか」。 *「すぐに△2二玉▲4二龍△1三玉でどうでしょうか」(片上六段)。その順なら後手が余していたようだ。以下▲1五歩とすると△1六桂▲同香△1七銀で先手玉がいきなり詰んでしまう。 86 同 玉(32) *着手の後、中井は頭に手をやった。寄せきれるかどうか。 87 5二桂成(64) *▲5二歩成は△4四角が竜に当たってくる。▲5二桂成が正解だ。▲9一馬の利きが自陣に通ったことも大きい。 88 3二玉(41) 89 4二成桂(52) *成田さんの猛追。中井天河は上部に逃げるしかなさそう。残っているかどうか。 90 3三玉(32) *逃げ道封鎖で▲2五香だろうか。 91 2五香打 *同じようでも▲2六香は、△同角▲同歩△2七金▲同玉△3五桂でトン死してしまう。 92 3五歩(34) *3四への脱出路を作った。 93 5二龍(62) *スリ寄って▲4三龍△2二玉▲2三龍までの詰めろ。 94 5四銀(45) *ギリギリまで秒を読まれて銀を引く。 95 4五金打 *成田さんはおしとやかな手つきから次々にパンチが出る。▲3二成桂までの詰めろで、△4五同銀は▲4三龍以下詰み。 * *※鮮やかな決め手。△5四銀で△5四銀打も▲4三成桂△同銀▲2三香成△同玉▲4三龍の「送りの手筋」で寄っているようだ。 96 2二玉(33) *必死のしのぎ。 97 4四金(45) *角を取って▲4三成桂△1三玉▲3一角までの詰めろ。先手玉は詰まず、後手玉は受けが利かない。ここで中井天河が「負けました」と頭を下げた。 *見事な寄せで天河戦の雪辱を果たした成田さん。14時から中倉彰子初段と決勝進出を懸けて戦う。 *両対局者は別フロアの大盤解説会場に移動した。 98 投了 まで97手で先手の勝ち