# --- Kifu for Windows V6.44 棋譜ファイル --- 開始日時:2012/09/01 10:35 終了日時:2012/09/01 12:32 棋戦:第6回日レス杯2回戦 持ち時間:0時間40分 消費時間:117▲40△40 場所:東京「JALシティホテル田町」 手合割:平手   先手:渡部愛3級 後手:石橋幸緒四段 手数----指手-- *本局は日レスインビテーションカップ・第6回女流棋士トーナメント準々決勝の石橋幸緒四段−渡部愛3級。東京都港区「JALシティホテル田町」で9月1日10時30分に対局が開始される。持ち時間はチェスクロック使用で40分、使い切ると1分将棋。 *事前に行われた振り駒の結果、と金が4枚出て渡部3級の先手に決まった。二人は大橋流で駒を並べた。 *(棋譜・コメント入力=銀杏) *※は感想戦の内容。 1 7六歩(77) *本棋戦はLPSAと日本レストランシステム株式会社が主催になって行われている。 *日本レストランシステム株式会社は多業態型レストランチェーンの経営や輸入業および輸入品の販売を行っている。 *http://www.n-rs.co.jp/index.html 2 3四歩(33) *日レスインビテーションカップはトーナメント形式のLPSA公認棋戦で優勝賞金100万円。今回が6期目。過去5回の優勝者は中井、中井、石橋、中井、中井(敬称略)。 3 2六歩(27) *本棋戦の協賛は株式会社トーエル、キリンビール株式会社、中沢乳業株式会社の3社。 *株式会社トーエルはプロパンガスや、ハワイウォーターやアルピナウォーターの販売。他にエアコンのクリーニングなどのホームサービスを行っている。 *http://www.toell.co.jp/ *対局者にはアルピナウォーターのペットボトルが置かれている。 *http://www.alpina-water.co.jp/ 4 3三角(22) *中沢乳業株式会社は生クリームや飲むヨーグルトなどを販売している。 *http://www.nakazawa.co.jp/ 5 同 角成(88) *キリンビール株式会社は日本の大手酒造メーカー。ビールの他にもチューハイやウイスキー、世界初のノンアルコール飲料の「キリンフリー」などを販売している。 *http://www.kirin.co.jp/ 6 同 桂(21) *本局は石橋四段の4手目△3三角戦法となった。窪田義行六段の得意戦法として知られる。 7 6八玉(59) *渡部3級は第3回からの出場。これまでの3回は準々決勝で敗れている。今回こそ壁を破りたい。 *ツアー女子プロ時代の第3回に準々決勝で石橋四段と対戦。そのときは四間飛車対居飛車急戦の将棋を石橋四段が制した。 *http://lpsa.sakura.ne.jp/kifu/nrs3_3-2.html 8 4四角打 *石橋四段は第1回から出場。第3回優勝者だ。 *第1回と第4回では準優勝している。 *http://lpsa.sakura.ne.jp/kifu/nrs3_5-1.html 9 8八角打 *再び角が向かい合った。この場合、▲4四角や△8八角成と交換した側が手損になる。 10 3二金(41) *今年で6回目を数える日レスインビテーションカップ。 *今回はアマチュア枠予選が行われた。 *http://www.joshi-shogi.com/nrs/2012/06/ *難関を勝ち抜いたのは、鎌村ちひろさん、和田あきさん、和田はなさん、小野花依さんの4人。和田あきさんは中倉彰子初段を破って2回戦で中井広恵天河と対戦している。 *http://lpsa.sakura.ne.jp/kifu/nrs6_2-1.html 11 4八銀(39) *準々決勝と準決勝は公開対局。大盤解説を早咲誠和さんと林隆弘さんが担当している。 *二人ともアマ大会の全国優勝多数の強豪。プロの公式戦でもアマチュア代表として出場し、勝ち星を挙げている。 12 6二銀(71) 13 7八金(69) *力戦居飛車に進みそうだ。渡部3級は慎重に3分近く考えて▲7八金と指した。 14 6四歩(63) *石橋四段の戦前のコメント「準々決勝は伸び盛りの渡部3級との対戦です。対局の中でも勢いを吸収できるようにしたい。朝、頭がボーっとしているので、『将棋ウォーズ』で1局指してきました。これで頭がさえてきたので、いい将棋を見せられればと思います」 *『将棋ウォーズ』は大盤解説を務める林さんが代表取締役を務めるHEROZが開発したスマートフォン用の将棋アプリ。 *http://shogiwars.heroz.jp/ *【HEROZ JAPAN】 *http://heroz.co.jp/ 15 4六歩(47) *渡部3級の戦前のコメント「石橋先生との対局では、戦型はどうなるか分かりませんが、自分らしい将棋を指せるように頑張りたい」 16 6三銀(62) *二人ともスーツ姿で対局に臨んでいる。 17 4四角(88) *角交換を保留する指し方もあったが、渡部3級は自分のペースで指せるように形を決めた。 18 同 歩(43) *今日の東京は晴れていたが、対局開始のころに急に雨が降り出してきた。にわか雨程度で後で晴れる予報がされている。 19 8八銀(79) *渡部3級は対局前から詰将棋専門誌の『詰将棋パラダイス』を開いていたり、気を高めていたりと気迫に満ちていた。 20 5二金(61) *石橋四段は対局前でも代表理事として、設営に動き回っていた。 21 7七銀(88) *渡部3級はこの形を作りたいので早めに角交換した。 22 4三金(52) *角換わり系の将棋で右金を4三に上がるのはやや珍しい。角打ちの隙が生じやすいからだ。 *ただし、本局は桂頭をケアするための意味合いが強い。 23 5八金(49) *LPSA棋戦をiphoneの「Kifu for iPhone」でご覧になりたい方は、 * [設定]→[棋譜リストURL] * から以下のURLをコピー&ペーストしてください。 *http://www.joshi-shogi.com/kifu/lpsa_kifu_list.txt 24 2二銀(31) 25 2五歩(26) 26 4一玉(51) *「居玉は避けよ」。金銀の城を作ったのだからその中に玉を入れるのがよい。 27 4七銀(48) *▲2四歩と歩交換できそうに見えるが、△同歩▲同飛△2五歩で飛車がクモの巣にかかってしまい先手不利。 28 3一玉(41) 29 7九玉(68) 30 7四歩(73) 31 5六銀(47) 32 5四銀(63) *相腰掛け銀に進んだ。後手が飛車先の歩を突いていないこと、3三の駒が桂であることが通常の角換わり腰掛け銀との違い。 33 6六歩(67) 34 9四歩(93) 35 9六歩(97) *似たような陣形の将棋では、小さい差が大きな差につながりやすい。△9五歩と位を取られると、△7三桂から△8五桂▲8六銀△9七桂成のような強襲が生じる恐れがある。 *端の位は保つ方が無難だ。 36 1四歩(13) 37 1六歩(17) *1筋も同様。 38 8四歩(83) 39 3六歩(37) *ここまでの消費時間は渡部9分、石橋10分。時刻は10時55分。 *先手は歩を持って▲6一角から▲3五歩△同歩▲3四歩が一つの筋。こうなれば△3三桂型をとがめている。 *ここで石橋四段が熟考している。自然なのは△2一玉だが、▲4一角が生じる面も。△7三桂は攻撃的。 40 6二飛(82) *石橋四段は10分近く考えて右四間飛車へ。 *対局場には10人くらいの観戦者が準々決勝の進行を見守っている。 41 6八金(58) *後手は△6五歩▲同歩△同銀としても、▲同銀△同飛に▲7二角や▲8二角がある。攻めると見せて、先手を牽制する展開に進むのだろう。 42 2一玉(31) 43 8八玉(79) *互いに入城。強い戦いを起こせるようになった。 *渡部3級が▲6八金右としてから入城したのは、単に▲8八玉だと△6五歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛のときに△6九飛成や△6九銀が生じてしまうから。 44 7三桂(81) 45 3七桂(29) *互いに「玉の守りは金銀3枚」「攻めの理想は飛角銀桂」の格言通りの陣形を築いている。 46 6五歩(64) *攻めの棋風の石橋四段。すぐに歩を突っかけた。このあたりから方針が問われる。 *渡部3級は▲5一角も視野に入れて指したいところ。 47 同 歩(66) 48 3五歩(34) *▲3五同歩の形は、歩を持てば△3六歩がある。そして、歩は6五に落ちている。ただし、自分の桂頭でもある。大胆な指し方だ。 *石橋四段は席を立って、お茶をいれた。 *11時20分ごろの局面。消費時間は渡部20分、石橋27分。40手目△6二飛で長考したので、消費時間に差がある。 *大盤解説の早咲さんは「後手を持ちたいですね。△3五歩の突き捨ては将来△3一歩の底歩を用意しています」。 49 同 歩(36) *石橋四段が前傾姿勢に。 *渡部3級は左手を口元に当てて考えている。 *▲5一角を利かす指し方も考えられたが、渡部3級は堂々としている。 50 9五歩(94) *戦場をどんどん増やす。これは9一香を使いやすくしたもの。 51 同 歩(96) 52 6五桂(73) *銀取りと△3六歩を見ている。 53 6六銀(77) 54 3六歩打 *石橋四段の言い分がすべて通った。渡部3級はどう反撃するのだろうか。 55 3四歩(35) *ノータイムで切り返す。石橋四段が前傾姿勢で食い入るように3三のあたりを見詰める。 56 3七歩成(36) *△3四同金は▲6三歩△同飛▲5二角が渡部3級の狙い筋。▲6三歩に飛車が逃げれば▲6五銀右と取れる。 *石橋四段は桂を取って目薬をさした。 *※感想戦 *渡部3級はこのあたりでは苦しいと感じていたそうだ。 57 3三歩成(34) *逃げるようでは大きな利かされ。そこで、踏み込む。 58 同 金(43) *2分ほど使ってと金を取った。大盤解説では△2八とが予想されていた。「これは石橋さんはいいと思っていますね」と早咲さん。 *ここで▲2九飛には△7五歩と攻めるのだろうか。 59 2九飛(28) *渡部3級は▲2四歩や▲3四歩△同金▲6三歩が楽しみ。 60 9七歩打 *味付け。▲同香なら先手陣が狭くなる。 *11時40分ごろ、残り時間は渡部11分、石橋4分。 61 7三角打 62 9六桂打 *※感想戦 *「△9六桂はやりすぎでしたか。でも、6五桂を狙われて忙しいですね」と石橋四段。 63 9七玉(88) 64 9二飛(62) *ここで▲9六玉は△9五飛▲8六玉△8五飛までの詰み。 65 8四角成(73) *▲7三角からの渡部3級の方針は駒を取っての上部開拓。 *受けに回っているので、▲3四歩や▲2四歩などと歩を渡さない方がいい。 66 9三角打 *切り返しがあった。▲7四馬は△6六角と銀を取られてしまう。 67 同 馬(84) 68 同 飛(92) 69 8四角打 *△9三角に手を止めていた渡部3級は9五歩を取られないように角を打った。8四が急所の位置で、▲9四桂などとすると、△8四角▲6七金直△9五角と根本を取られて危険だった。 *ここで△8三飛▲6二角成△8四角がまた6六銀取りだが、▲同馬△同飛▲7三角と何度でも角を打っていくのだろう。 *石橋四段は攻勢を取っているが、歩切れなのは痛い。3七とも9筋の攻めと離れていて、まだ関連が薄い。 70 9二飛(93) *秒読みに入った石橋四段、角に当てずに辛抱した。 *後手は1手使って8四の駒を馬から角に後退させたのはどれだけ効果があるか。 *※感想戦 *「8四が角なら何とかと思ったんですけど、歩切れで手が難しかったですね」と石橋四段。 71 8六歩(87) *陣形をふっくらさせる。▲8七金と駒を集める手を含みにしつつ、△6四角▲8六歩△8二飛▲5一角成△8六角のような攻めを消して味がいい。ここで△6四角なら▲9六玉△8二飛▲8五歩で大丈夫のようだ。 72 3六と(37) *「と金の遅早」というが、このと金攻めは間に合うだろうか。 73 3九飛(29) *△3八角に備えて△4六とに▲6五銀右と取りやすくした。 *渡部3級は残り2分。 *※感想戦 *「この手がいい手でした」と石橋四段。 74 4六と(36) 75 3四歩打 *考慮中の渡部3級はここで秒読みに。 *手抜いて攻め合った。確かにこの歩が入れば大きい。 76 同 金(33) *しかし、そうはならない。 *▲同飛には△3三歩。3筋だけ見れば金と歩の交換だが、5六銀が取れるので駒損ではない。それよりも「終盤は駒の損得より速度」で手番を握れるのが何よりも大きい。 77 6五銀(56) *そこで、渡部3級は桂の方を取る。3四金取りを常に見せることでプレッシャーをかけている。 78 同 銀(54) *石橋四段は先手玉の上部脱出だけは阻止したい。しかし、△9五飛は▲同角△同香▲9一飛が王手香取りで上が抜けてしまう。工夫がいる。 *渡部3級はテーブルに右手を置く。 79 2六桂打 *駒音高く。▲6五同銀もあったが、強く踏み込んだ。 *思わず石橋四段が右手を頭に当てた。 *※感想戦 *渡部3級は手順の組み合わせが分からず、難しいと思っていたという。「▲6五同銀の方がよかったと後悔していました」と渡部3級。 80 3三歩打 81 3四桂(26) *渡部3級が決めに出ている感もある。ただし、駒が足りているのかどうか。 82 同 歩(33) *「うーん」、渡部3級がうなる。 83 6五銀(66) *このタイミングで。ただし、78手目△6五同銀に▲同銀としたのに比べて後手に桂を渡しているのは不安材料だ。石橋四段はいすにもたれて考える。 84 5七と(46) *▲同角は△9五飛。おりに収監したライオンが暴れ出してしまう。取るなら▲同金だ。 85 同 金(68) *迷って▲5七同金。玉に近づける▲7七金右も魅力的だった。 86 4八角打 *駒音高く。飛車取りと△5七角成▲同角△9五飛を見ている。 87 3四飛(39) 88 3三銀(22) *すぐ△5七角成▲同角△9五飛は▲3二飛成から頓死しそうだ。かといって、△3三歩は▲4四飛、△4三銀では駒不足の懸念がある。 *持ち駒を使わない△3三銀はギリギリの一手だ。 *※感想戦 *「流れは△3三銀打なんでしょうけど、攻めが途切れてしまうかもしれないので」と石橋四段。 89 3八飛(34) 90 5七角成(48) 91 同 角(84) *先手の飛角は後手陣によく利いている。△9五飛と走ってもまだ詰めろではない。 *ここで隣の鹿野圭生二段−島井咲緒里二段戦が終局した。二人は大盤解説会場に向かう。 92 9五飛(92) *銀取りと△8八桂成を見ている。ただし、先手玉はまだ詰まない。反撃のチャンスだ。 93 5一角打 *攻防に利かす。攻めに特化するなら▲4一銀もあったところ。 *終盤戦では玉の側近である金を狙うのが好手になりやすい。 *※感想戦 *「分からなかったです。自信がありませんでした。苦しいと思って角を打ちました」と渡部3級。石橋四段も「あまり自信はなかった」と話す。ここで▲8五金が林さん指摘の好手。これで先手は受かっていた。△8八桂成なら▲9五金と根元を取れる。 94 6五飛(95) *6五銀は後手玉が4筋に逃げたときの押さえになっていた。それを外して攻防。 95 4一銀打 *ここで▲4一銀。▲3二銀成△同玉▲3三角成以下の詰めろ。 *石橋四段はグッと顔を盤面に近づけて自玉を見た。 *渡部3級は前傾姿勢で静かに考えている。 96 8八銀打 *詰ましに出た。 97 同 金(78) *▲8七玉も考えられた。ただし、△9五桂は▲同角成と取れるが、後手玉への詰めろが外れていそうだ。 98 6七飛成(65) 99 7七金打 100 8八桂成(96) *ノータイムで。 101 同 玉(97) *先手陣は大駒3枚がよく利いている。3八飛がいないと、△8七歩▲同玉△7八銀が、5七角がいないと△8七歩▲同玉△7五桂があった。 102 8七歩打 *チェスクロックのブザーが鳴り響く中、慌てて王手。 103 同 玉(88) *渡部3級、先ほど以上に盤に近づく。 104 7八銀打 *渡部3級は銀打ちを見てうなずいた。 105 同 飛(38) 106 5七龍(67) *石橋四段は銀捨てで、3八飛の利きを変えて自玉を安全にした。 107 3二銀成(41) *ここで▲3四歩は△7五桂▲同歩△4三角が攻防の王手で後手玉の詰めろが消えてしまう。 108 同 玉(21) *後手に駒が入ると△7五桂以下の頓死筋がある。 *どちらが勝ちなのだろうか。 *時刻は12時25分。 109 3四歩打 *再び先手玉が詰むかどうかが焦点に。△4三角の筋を消したにしても、銀を渡したのは危険だが。 *※感想戦 *「堂々と詰ましてみろと言われて詰まないのですね」と石橋四段。 110 7五桂打 *8五から滑らせるように打たれた。▲8八玉は△8七銀で数が足りている(5七竜が間接的に利いている)。 111 同 歩(76) *12時27分、残っている対局は本局のみとなった。 112 7六金打 *※感想戦 *敗着に。ここで△4三角から△3四角と取っていればまだ難しかった。 113 同 玉(87) *先手玉は5七竜と9一香が利いており案外狭い形だ。 114 6五銀打 115 8五玉(76) *9筋は双方の香が利いている。なので、△9四金は打てるが、▲同香と取られてしまう。 116 8四歩打 *石橋四段、腕を組んで天をあおぐ。 117 同 玉(85) *石橋四段は大きく息をつき、チェスクロックのブザーが響く中で「負けました」と投了した。先手玉は詰まず、後手玉は受けが利かない。 *終局は12時32分。消費時間はともに40分。 *渡部3級は4回目の出場で初の準決勝進出。準決勝では船戸陽子二段−大庭美樹初段の勝者と対戦する。 *「最後、詰まないと分かってよくなったと思います」と渡部3級。 *「力戦の押し引きある将棋で面白い将棋だったと思います。自分なりに指して悔いがないというコメントもありますが、かなり悔しいです。若さと勢いを感じました。愛ちゃんには頑張ってほしい」と石橋四段。 118 投了 まで117手で先手の勝ち