# --- Kifu for Windows (Pro) V6.32 棋譜ファイル --- 開始日時:2009/02/28 10:00 終了日時:2009/02/28 16:40 棋戦:第1期天河戦 持ち時間:3時間 消費時間:129▲180△149 場所:京王プラザホテル 手合割:平手   先手:中井広恵六段 後手:成田弥穂アマ 手数----指手-- *第1期天河戦もいよいよ決勝3番勝負。決勝戦に進出したのは中井広恵六段とアマチュアの成田弥穂さん。 *注目の第1局は東京都新宿区にある京王プラザホテルにて2月28日午前10時より行われる。 *持ち時間はチェスクロック使用で各3時間、秒読みは1手60秒。 *振り駒は事前に行われ、歩が3枚出て中井六段の先手に決まった。9時53分ごろ、両者大橋流で駒を並べ始めた。 *(棋譜・コメント入力=銀杏) 1 7六歩(77) *「10時になりましたので、中井六段の先手で対局を始めてください」と立会人の藤森奈津子三段が宣言し、対局開始。20秒ほど間をおいてから中井六段が角道を開けた。 2 5四歩(53) *成田さんは2手目に5筋の歩を伸ばす。中飛車を目指している。 3 2六歩(27) *対局場はしんと静まり返っており、早くも緊張感がある。 *うかつに物音を立てられない雰囲気だ。 4 5二飛(82) *成田さんは2分ほど考えて中飛車に構えた。 *ここで▲2五歩△3四歩と進めばゴキゲン中飛車の出だしとなる。 *中飛車は成田さんが本棋戦で女流棋士をなで切りにした戦法だ。中井六段も当然対策を用意しているであろう。 5 2五歩(26) *中井広恵(なかいひろえ)六段は1969年6月24日生まれ、北海道稚内市出身。81年、第6回小学生名人戦準優勝。81年4月に11歳10カ月(当時の最年少記録)で女流2級としてプロ入り。83年奨励会に入会し、2級まで昇級(90年退会)。2002年女流六段。タイトル獲得は女流名人9期、女流王将4期、女流王位3期、倉敷藤花3期の計19期。棋戦優勝はレディースオープントーナメント4、鹿島杯3。 *LPSAの代表理事の要職を務める。夫は植山悦行七段、女児3人を設ける。著書「鏡花水月」は第17回将棋ペンクラブ大賞に輝いた。 6 3二金(41) *成田弥穂(なりたみほ)さんは宮城県在住の中学2年生。LPSAが主催する女子アマ王位戦で優勝し、本棋戦の参加資格を得た。趣味はピアノ・空手(二段)。得意科目は数学。 * *成田さんは△3四歩ではなく、△3二金と角頭を受ける形を選択した。 7 2四歩(25) *2筋の歩を交換しにいく。 *この手を指して、中井六段はペットボトルのお茶をコップに注いだ。 8 同 歩(23) *本局で使用している駒は江陽師作の巻菱湖書。盛り上げ駒の逸品だ。 9 同 飛(28) *中井六段の今期成績は *公式戦:14勝6敗(0.700)/今期LPSA公認棋戦:16勝2敗(0.889) *LPSA公認棋戦では第2回日レスインビテーションカップや第11回1day柳月カップ、第20回1dayアパガードカップで優勝している。 10 2三歩打 *成田さんは *第2回全国小学生倉敷王将戦低学年の部3位。 *第5回全国小学生倉敷王将戦高学年の部3位(準決勝では、現在奨励会三段の阿部光瑠君に敗れた)。 *第28回・第29回の中学生選抜選手権女子の部優勝。 *第38回女流アマ名人戦で準優勝などの実績がある。 11 2八飛(24) *中井六段は前年度に公式戦で負け越しを喫し、女流名人位戦ではA級から陥落した。本年度も前半は調子が上がらなかったが、昨年の9月末に日レス杯で優勝したころから復調し、女流名人位戦でA級復帰、第2回大和証券杯女流最強戦ではベスト4に進出している。 12 5五歩(54) *成田さんは2筋の歩交換の代償に5筋の位を取った。 *成田さんもペットボトルのお茶をコップに注いだ。 13 4八銀(39) *中井六段は予選Bブロックで山下カズ子五段、中倉彰子初段を破って2連勝で予選を突破。本戦1回戦では船戸陽子二段、準決勝で松尾香織初段に勝利して決勝進出を果たした。 14 3四歩(33) *成田さんは予選Cブロックで船戸陽子二段、中倉宏美初段を連破して2連勝通過。本戦1回戦では中倉彰子初段、準決勝で北尾まどか初段に勝利し、決勝戦に進出した。 15 6八玉(59) *「居玉は避けよ」 *玉を安全な場所へ移動させる狙いだ。 16 4二銀(31) *アマチュアの成田さんにとって持ち時間3時間は経験のない設定だろう。その持ち時間をどのように配分していくかが、本局を左右する鍵の一つとなりそうだ。 17 7八玉(68) *本日17時より、本局が行われている京王プラザホテルにて中倉宏美二段の昇段免状授与式が行われることになっている(本局の進行によっては時間の変更あり)。 18 6二玉(51) *成田さんも玉を移動させる。 *中飛車は5筋が主戦場になるので、玉は8筋方面へ持っていくのが基本だ。 19 6八銀(79) *中井六段は一流棋士なので、アマチュアとの対戦は初めてに思えるが、8年前にレディースオープン(マイナビ女子オープンの前身棋戦)でアマチュア選手と対局した経験がある。 * *※「角交換して左美濃にする将棋をよく指しているが、本譜はそうならなかった」と中井六段。 20 7二玉(62) *ここまでの消費時間は中井六段9分、成田さん5分。 21 5八金(49) *舟囲いの基本形。この後、右銀を▲3六歩〜▲3七銀と使うか、▲4六歩〜▲4七銀と使うかで展開がガラリと変わる。 *ここ数手の中井六段の着手に注目したい。 22 5三銀(42) *成田さんは「カチリ」と小さな駒音を立てて左銀を5三に繰り出した。 *△3五歩〜△5四飛〜△2四飛のひねり飛車もよく見られる作戦。本譜は左銀を5四に構える構想。腰掛け銀戦法などにも見られるように5四銀型はほとんどの場合で好形となる。 23 4六歩(47) *5分以上考えていた中井六段は▲4六歩と伸ばし、銀を4七に使う構想に出た。 24 5四銀(53) *▲4六歩を見た成田さんは、スッと右手を伸ばして音もなく5三にいた銀を5四に動かした。 *中飛車の5四銀型は、5筋で棒銀にしたような格好で攻撃力が高い。また、△6四歩〜△6三銀のように受けに切り替えることも可能で柔軟性がある。 25 6六歩(67) *序盤で偶数の筋の歩を突くと、角の運用に時間がかかるため持久戦になることが多い。 * *※大盤解説では高橋九段が序盤の▲6六歩を疑問視している。角道が2つ止まるのは面白くないのではないかという。 26 8二玉(72) *次に△7二銀と上がれば美濃囲い、△9二香〜△9一玉とすれば穴熊。 27 4七銀(48) *右銀の活用。場合によっては▲3六銀〜▲2五銀のドリブルもある。 28 4四角(22) *角を好位置へ。△3三桂と活用する準備。 *2二角のままだと、▲3六銀△3三桂の形になった時に角が使いにくくなる。 *△4四角▲3六銀△3三桂の駒運びなら、角が使いやすい状態をキープできる。 *中井六段は1手1手時間を使っている。 29 9六歩(97) *あなたの囲いは美濃囲いですか、穴熊ですかという打診。受ければ美濃囲い、受けなければ穴熊の公算が高い。 30 9四歩(93) *端歩を受けたので成田さんは美濃囲いにする可能性が高い。穴熊は左金が3二に離れているのでバランスが悪い。ここまでの消費時間は中井六段25分、成田さん9分。 *成田さんは普段通りの時間の使い方といったところか。これまでの天河戦の対局で、成田さんは形勢を苦しくした対中倉宏二段戦以外は時間を残しての終局となっている。中井六段はここで10分ほど考えている。時刻は10時45分となった。 *▲3六銀は△3三桂でイマイチなので、攻めを狙うなら▲3六歩から▲3七桂と桂を使いたい。玉形の整備に当たるなら▲6七銀〜▲7五歩〜▲7六銀の位取りや▲6七金〜▲7七角〜▲8八玉〜▲7八金と玉を深く囲って、あわよくば穴熊を視野に入れる指し方が考えられる。ここも作戦の分岐点といえる。中井六段の次の一手は? 31 5六歩(57) *中井六段が15分ほどの長考で指した手は▲5六歩。序盤の緊迫しつつもゆったりとした空気がさらにピンと張り詰めたものになった。 *先手の理想は△5六同歩▲同銀△5五歩▲4五銀△同銀▲同歩△3五角▲4一銀の割り打ち。指されてみれば「浮き駒に手あり」で後手の6一金が浮いていることや▲4一銀のキズが残っているので、ここで戦いを起こすのはなるほどの発想だ。戦機をうまくとらえたのだろうか。 *成田さんは上記の手順のうち、どこで変化するか。ここで△7二銀▲5五歩△同角が一例として考えられそう。早指しで駒組みを進めていた成田さんもさすがに腰を落として考えている。成田さんが10分考えたところで11時となったが指す気配はない。 32 同 歩(55) *14分ほど考えて、成田さんは歩を取った。 *アマチュア棋戦では持ち時間は30分程度であることが多い。14分の長考は成田さんにとって、これまでで一番の長考かもしれない。 33 同 銀(47) *▲4五銀以外にも▲6七銀引という発想もありそう。 *金銀4枚の連結が美しい。 34 3三桂(21) *成田さんは強く反発する順を選んだ。 *後手はこの瞬間が怖いが、逆にいうとここで先手から厳しい攻めがなければ△5一飛や△7二銀の余裕を得られて一息つける。 35 4七金(58) *中央を厚く構える。後手は△7二銀や△5一飛の余裕が得られたか。 * *「よく上がったなあ。何も考えなければ▲6七金かなと。▲4七金は玉から離れるので思い切った一手です」と高橋九段。 36 7二銀(71) *成田さんは7分の考慮で、そっと手を伸ばして美濃囲いを完成させた。 *ちなみに、6一金・7二銀の形は「片美濃」というのが正式名称。 *6一金・7二銀に5二金ともう一枚くっついた形を本美濃囲いという。 37 7七角(88) *壁形を整えた意味合いが強い。決戦の含みがあったが、いく分穏やかな展開か。 *▲7七角を着手した中井六段は席を立った。 *後手は△6四歩や△5一飛が指したい手。どちらを先に指すか。△6四歩は▲4五歩△6二角(△同銀は▲同銀△同桂▲4六歩で桂を取られる)▲5五歩△同銀▲同銀△同飛▲6五歩の変化の時に、後で▲6四歩と取られるリスクがある。△5一飛が無難。 38 6四歩(63) *△5一飛が無難、と前手のコメントに打ち終えた瞬間に成田さんの手が6三歩に伸びた。先手から決戦策がなければ、△6四歩が後に▲6五歩の位取りを阻止しながら、△6三銀〜△7二金の木村美濃への組み替えが狙えて伸び伸びと指せそうだ。 *11時30分の局面。消費時間は中井六段55分、成田さん35分。中井六段が5分ほど考えたところで、成田さんが「失礼します」と言って席を立った。 *先手から攻めを狙うなら▲4五歩△6二角▲5五歩の展開だが△同銀▲同銀△同飛▲6五歩△4五飛でどうか。 *11時45分ごろ、中井六段はチェスクロックを見た後、自分の腕時計を見て現在の時刻を調べた。昼食休憩時刻の12時に近づいている。中井六段はかれこれ20分ほど考えている。「ふぅー」と息をついてお茶を飲んだ。 39 4五歩(46) *11時53分、中井六段は25分近い長考で▲4五歩と突き出した。展開次第では決戦に突入することも。▲4五歩に△同銀は▲同銀△同桂に▲4一銀や▲4六歩で先手がいい。よって△6二角や△7一角と引くことになりそうだ。 *成田さんとしては、このあたりで長考して昼食休憩入りするのも「手筋」。昼食休憩中に先のことを考えられる。男性棋士なら、そうする人が多いかもしれない。成田さんの考慮中に昼食休憩時刻の12時となった。消費時間は中井六段1時間17分、成田さん42分。対局は13時に再開される。 *13時から現地で大盤解説会・公開対局(1部)・指導対局が行われる。受付開始時刻の12時30分にはすでに多くの方が来場している。受付会場には中井六段の夫である植山悦行七段や大野八一雄六段が姿を見せていた。 *12時50分ごろ、指導対局や大盤解説を担当する高橋道雄九段が対局室に入り、局面の様子を見詰めていた。12時55分ごろには両対局者、立会人の藤森三段が席に着いている。13時を回り、30分間は公開対局となった。すぐに10名近い方が観戦に来られた。その間も成田さんは考えている。対局再開からしばらく時間が過ぎ、カメラマンは成田さんが着手するところを撮影することなく撤退となった。 * *※大盤解説の高橋九段は「局面が緊迫したところなので、いいタイミングで昼食休憩にしました」という。 40 3五角(44) *13時6分ごろ、対局再開後もしばらく考えていた成田さんは3五に角を動かした。▲3六歩にはバッサリいくつもりか。観戦者は静かに戦況を見守っている。 *▲3六歩には△2四角が大人の味か。▲2五歩と打ってくれるなら、そこで△6八角成とした方が先手の飛車先が重くなって後手の得だ。また、▲2五歩と打たないならば、△4五銀から中央への殺到を狙った時に2四角が十分働く。 *中井六段は左手をほおに当てて考えている。▲3六歩△2四角▲5七歩と5筋を守りながら角の直射を消す指し方は消極的だろう。 *大盤解説会では片上大輔五段、松尾香織初段が飛び入りで解説している。 41 5五歩打 *「14歳のころは、2時間という持ち時間は使い切れませんでした」と大盤解説の片上五段。若いうちは早指しになりやすいため、時間を使うのは大変なようだ。 *さて、▲5五歩。片上五段は△5五同銀▲同銀△同飛▲4六銀で飛角両取りと解説。「大駒は戦場の近くにいるとあまり良くないのです」と片上五段。よって、▲5五歩に△6三銀引▲3六歩△7一角▲3七桂から持久戦になる変化が大盤解説で示されている。△4五銀はやはり▲同銀△同桂▲4六銀なので、△6三銀引なのだろうか。しかし、ここで銀が引くようでは△3五角と前に出る手と△6三銀引と駒が下がる手で方針がチグハグになってしまう。 *消費時間は中井六段1時間29分、成田さん55分。13時26分ごろ、中井六段がウンウンとうなずいた。 42 4五銀(54) *15分ほど考えて△4五銀と出た。△6三銀引では押さえ込まれてしまうのを嫌ったのだろう。▲4五同銀△同桂に▲4六歩や▲4六銀とされた時に後手の攻めは続くのだろうか。 *中井六段は腰を落として考えている。攻めを受け止めれば自然に良くなるので、今が考えどころと見ている。 43 同 銀(56) *中井六段は当然に見える▲4五同銀に6分考えた。 44 同 桂(33) *成田さん側から見ると、5五歩がなんともうっとうしい。「歩は将棋の皮膚」といわれるが、先手から見れば歩が置いてあるだけで心強いことこの上ない。 *先手は局面をはっきりさせるなら▲4一銀。ゆっくり慌てない方針なら、4六に銀や歩を打つ手が考えられる。前者は仮に3二金を取れても後手玉には響かないので、しばらくの間は受けて受けまくる展開も想定しておかねばならない。 *13時50分、大野六段と北尾初段によるサプライズ大盤解説が始まった。天河戦のサイト(http://joshi-shogi.com/tenga/)を要チェック! 45 4六銀打 *中井六段は攻守にバランスが取れた棋風。このような指し方が得意だ。 *▲4六銀を打った中井六段はスッと席を立った。 *「▲4六歩もありますが、▲4六銀はより厳しい手ですね」と大野六段。 *▲4六銀に△同角▲同金△5七銀▲4五金△5六銀▲5七銀△同銀成▲7九桂という指し方を解説している。この展開は「後手の攻めが少し細そう」と大野六段。 *「▲4一銀と打つにはもっとゆっくりした展開で打たないといけない。局面が激しい展開で▲4一銀〜▲3二銀成と2手掛けて玉から遠い駒を取っても響きがないからです」と大野六段。 *「▲4六銀のところは中井さんは自分がいいと思っているでしょうね」と高橋九段。 46 同 角(35) 47 同 金(47) *角を取るときの中井六段の駒音は高かった。 48 4四銀打 *もたれ指し。ジッとチャンスを待つ。次に△5七銀を狙っているとはいえ、なかなか指せない手だ。 *「現局面は居飛車が多少いいでしょうが、簡単にはいきませんよ、という手です」と大野六段。 *△4四歩には▲4七金と引く手があったようだ。次に▲4六歩の桂取りが受けにくい。△4四銀に▲4七金なら△5五銀と進出する味がある。ただし、「後手の攻めが苦しい」と大野六段。中井六段は左手をあごやほほに当てて考えている。 *大盤解説が終わり、北尾初段がマンデーレッスンのCMを行った。第15期のゲスト講師に木村一基八段、田村康介六段を迎えるとのこと。 * *「やー、よくここに銀を打ちましたね」と高橋九段。 49 8六角(77) *「パチン」。中井六段は高い駒音で8六に角をさばいた。働きの弱かった遊び駒の活用。 *▲6四角〜▲4五金〜▲7四桂の筋が透けて見える。また、次に▲6四角と出た形は△5五銀を防いでいる。 *▲8六角に△5七銀は▲5六金とかわして大したことがないか。後手は△5五銀と出ると▲4五金と桂を取られてしまうのが泣き所。 *14時5分過ぎ、両対局者におやつのロールケーキが出された。糖分は頭の栄養補給にいい。 * *「▲8六角では▲1八角が有力でした」と高橋九段。 50 6五歩(64) *14時15分の局面。消費時間は中井六段1時間55分、成田さん1時間20分。2回目の公開対局となり、多くの方が観戦している。 *次は何でも△6六歩。先手にとって嫌みな拠点になる。▲8六角と上がったから△6五歩と突きやすくなった意味もあり(7七角なら△6五歩はありがたく▲同歩と取られる)、精神的にも嫌なところを突いている。 *△4四銀といい△6五歩といい、相手を楽にさせないようにしている。 *両者、おやつには手を出さず盤上没我。表情もあまり変えないで考えている。 *成田さんは駒の損得より、駒の効率が重視される局面にもっていきたい。中央だけで戦いになれば、2九桂や2八飛が遊び駒となる。 51 4一角打 *中井六段は10分ほど考えて▲4一角と打ち込んだ。後手は飛車を取られてもすぐに寄るわけではないので、平凡に△6六歩と取り込む手は有力だろう。 *△4二金という手も考えられる。▲5二角成△同金左は飛車をさばきながら3二金が玉の守りについて後手にとっては都合がいい。 *成田さんはポーカーフェイスで考えている。 * *「私の兄弟子の植山さんが▲4一角を見て、これはダメだと嘆いていました」と高橋九段。 *※▲5六金△6六歩▲同金△6七歩▲同金△5五銀の展開も有力だった。しかし、中井六段は△6七歩から銀をさばかれるのが嫌だったようだ。 52 4二金(32) *遊び駒が合体。これはいかにも味がいい。 *▲2三角成で▲3四馬〜▲4五金を目指す手は考えられるが、▲2三角成の瞬間はあまりにも元気が出ない。 *14時30分、大盤解説は船戸二段、藤田1級が担当している(大盤解説の動画はhttp://joshi-shogi.com/tenga/で見ることができる)。「植山七段が△4二金を見て、これはまずいかもしれないと言っていました」と藤田1級。 53 5二角成(41) 54 同 金(42) *後手は4四銀以外の駒はほぼ全てさばけたといえる。 55 9五歩(96) *美濃囲いの急所。ここに手がいかないと、いつまでたっても後手陣を崩せない。何せ、横から攻めようとしても△5一歩の底歩が鉄板よりも堅い。 *ここ数手で、成田さんが盛り返したか。中井六段、首をかしげた。 *後手は▲9五歩にどう応じるか。△同歩が自然。大盤解説では△同歩▲4五金△同銀▲6四桂△6六歩の展開を検討している。 * *▲9五歩には△同歩と取る一手です」と高橋九段。しかし、△3九角を示されると「これも打ちたくなるね」 56 3九角打 *小さな駒音で、そっと置くように△3九角が指された。△6六角成が攻防という判断だろう。 *3九角は遠く9三まで利いており、▲9四歩を緩和している。 57 2三飛成(28) *美濃囲いは横からの攻めに強いので、横攻めの寄せを狙ったというよりも、歩を補充して攻防に使おうという意味だろう。 58 6六角成(39) *数手前に突いた6筋の歩の上に乗ってしまい違和感もあるが、馬が9三まで利いており端攻めを緩和している。 *(1)▲7七桂は△5七桂成から△6七銀の打ち込みが厳しい。5七に桂が成られる展開は4六金が働き口をなくしてまずい。 *(2)▲7七角なら△5七銀か。 *(3)▲7七銀は△5七馬で4六金が受けにくい。以下▲4五金△同銀となり、△5六銀からなだれ込みが残る。 *中井六段は左のひじをテーブルに載せ、前傾姿勢になっている。成田さんは席を立った。 *中井六段は9筋を取り込み、玉が広い状態にして反撃を狙いたい。中井六段、残り40分を切った。 *14時50分に船戸、藤田ペアの大盤解説は終了となった。15時から高橋道雄九段、石橋幸緒女流王位の大盤解説が行われる。 59 7七桂(89) *△5七桂成が見えるが、そこで▲6七歩と打って受けようとしている。手番が先手に渡ってくれば▲9四歩の取り込みが楽しみ。それを踏まえて考えると、ジッと△9五歩と手を戻すのは有力。 *白熱の攻防戦。中井六段は残り36分。険しい表情で考えている。成田さんは1時間20分近く残している。 *前にも書いたが、△5一歩の底歩が鉄板なので先手は横から美濃囲いを崩せそうにない。そこで、2三龍を2六や2八に引き付けて働かせたい。 *15時になり、高橋九段と石橋女流王位の大盤解説が始まった(http://joshi-shogi.com/tenga/)。「(成田さんに)討ち取られた方には、雷を落とそうと思っていましたが、成田さんの将棋を調べてみたら強くてビックリ」と高橋九段。 60 5七銀打 *成田さんは10分以上考えて5七に銀を打った。▲6七歩にはどのように攻めをつなげるのだろうか。 *二人同時にコップに注いだお茶に手を伸ばした。 61 6七歩打 *この時に成田さんの継続の攻めがポイントになりそうだ。 *△7六馬と逃げると▲5六金と遊んでいた4六の金が働いてくる。 62 7六馬(66) *▲5六金に△6六歩は筋(▲5七銀は△6七歩成がある)だが、▲同歩と取られてどうか。 63 5六金(46) *成田さんの△4二金〜△5二同金左といい、この▲5六金といい、互いに遊び駒の活用が見事だ。 *△6六歩は▲5七銀に△6七歩成を見た、筋の一着だが▲同歩と冷静に取られて次があるかどうか。△8六馬▲同歩△1四角の筋で決まるか。 64 6六歩(65) *しばらくして成田さんの手がスッと伸びて△6六歩が着手された。 *中井六段はこの手を見て、ウンウンうなずく。なかなかやりよるわいという反応か。 *▲同金は△同銀成▲同歩△6七歩▲同銀△8六馬▲同歩△5七桂成の要領でさばけてくる。▲同歩と取ることになりそうだが。 * *64手目△6六歩を見て「筋中の筋じゃないですか。いやー、強いね」と高橋九段は感心。 *※「△6六歩を見て、この瞬間勝ったなと思った」と高橋九段。しかし、「この後の中井さんの粘りがすごかった」とも。 65 同 金(56) *▲同金だった。 66 同 銀成(57) 67 同 歩(67) *後手は△5六歩が間に合うなら話は早いが、中井六段としてはそれで負かされるわけにはいかないだろう。 68 5七桂成(45) *軽妙な成り捨て。 * *※△5六歩が良かったか。一瞬、金が遠くなった。 69 同 銀(68) *桂は美濃崩しに欲しい駒。この攻めは先手も望むところ。 70 6七金打 71 8八玉(78) *先手は▲7八歩と受けることができるようになったのは大きい。 72 5七金(67) *後手は駒が遠ざかったのは不満材料。 *中井六段にターンが来た。 73 9四歩(95) *待望の取り込み。 *▲9五歩は55手目に指されたので18手後に取り込めたことになる。 74 9六歩打 *手筋で切り返す。平凡に△9二歩では先手の陣地が広すぎる。 *△9六歩▲同香の交換があれば、香が浮き駒だし玉が狭くなる。 *残り時間は中井六段25分、成田さん1時間5分。 75 同 香(99) *先手玉は薄いが、後手の攻め駒も少ないので、簡単ではない。 76 9五歩打 *もう一発。▲同香には△9六歩と香の背中をくすぐる垂れ歩がある。 *歩の後ろに垂れ歩を打つ攻めは相手からすると、癒えないキズを負ったようなもので、受けにくいことこの上ない。しかし、▲同角では9筋の攻めがなくなる。 *中井六段、残り20分を切った。成田さんは1時間以上残している。 77 同 香(96) 78 9六銀打 *銀の方で迫る。▲7八銀なら後手陣が大分楽になる。 *▲7九桂は△6八歩▲7八金△6九歩成だろうか。ならば、▲9九桂か?成田さんには△8六馬▲同歩△9七角から△8六角成が上部を厚くする有力な手段としてある。 * *※このあたりの感想を聞かれ、「ちょっと残していると思った」と成田さん。 79 7八金(69) *大盤解説では73手目の局面で成田さんが指した一着を次の一手問題として出題された。 *▲7八金は駒を節約した受け。△6七金が見えるが、そこで▲7九桂のつもりだろう。しかし、△7八金▲同玉△6七歩と挟み撃ちにされてなかなか振りほどけないか。 *成田さんは残り1時間を切った。中井六段は残り10分だ。 *この局面で△6七歩で間に合えば話は早い。 80 6七歩打 *読みを入れて歩を垂らした。 *歩の攻めで間に合うなら、これが一番いい。 81 9三歩成(94) 82 同 香(91) *ノータイムで△同香。 83 同 香成(95) 84 同 桂(81) *△同玉も普通だが、桂馬で取った。 *9四に馬が利いていて▲9四桂と打てない。 *▲6四角は詰めろだが、△6三金とブロックされる。 *中井六段、ピンチか。 85 9四歩打 *中井六段は9四に歩をたたき、大きく息をついた。 *△同馬に▲9五香と反撃する。 86 6八歩成(67) *△7八と▲同玉△8七銀成の詰めろ。中井六段に手段がないといけない。 87 9三歩成(94) *中井六段、残り5分。 88 同 玉(82) *後手玉が大丈夫なら後手勝ち。 *中井六段は残り5分を切った。懸命に手段を探す。 89 8五桂打 90 同 銀(96) *冷静。△8四玉は▲9五銀△7四玉▲6四飛の頓死。 91 同 桂(77) 92 同 馬(76) *馬が遠ざかったが、駒が入ったので詰めろになっているようだ。 93 9四歩打 *△同馬▲9五香と馬を押さえるつもりか。 94 同 馬(85) *▲9六香や▲9五香で反撃するしかなさそうだが。 *△7八と▲同玉△6七馬の筋を消せる。 95 9六香打 *唯一の反撃。△7八と▲同玉△6七馬の筋を防いでもいる。 96 7八と(68) 97 同 玉(88) *成田さんの表情は変わらない。 98 6七金(57) 99 8九玉(78) *先手玉は詰まない。例えば、△7七桂▲9八玉の形は金駒が2枚ないと詰まない。 *後手玉は詰めろ。怪しくなったのか? *これで怪しいのであれば、84手目△9三同桂では△同玉の方が分かりやすかったかもしれない。 100 7七桂打 *▲9八玉には△9七歩と打って、▲同角には△9五歩、▲同玉は△8五桂を狙う。 *ここで中井六段は1分将棋に入った。 101 同 角(86) *成田さんは角をうまくはずして詰めろ逃れ詰めろにしたい。しかし、8七歩の拠点が大きい。 *△8八香があるか。 102 8八香打 *成田さんの手が駒台に伸びかけて、いったん引っ込んだ。 *そして、やはり駒台に手がいき、△8八香が指された。 *先手玉が詰むかどうか。 103 同 角(77) *57まで読まれて指された。 104 7八金打 *▲9八玉△8八金▲同玉△7七角は▲8九玉で詰みはない。 105 9八玉(89) 106 8八金(78) *成田さんは自玉を厚くして負けない形を作ろうとしているようだ。 *▲同玉に△7六桂も▲8九玉で際どく詰まない。 107 同 玉(98) *ここで△9五歩か。 *馬が厚く、▲9一飛も△9二桂。 *成田さんは残り45分程度。 108 7六桂打 *これは▲8九玉で詰まない。 *自玉を厚くした意味もあるが、逆に受け駒をなくした意味も。 * *※単に△9五歩が勝った。以下▲9一飛△9二桂▲8六桂△7七角▲8九玉△8六角成▲同歩△8二玉なら残っていたようだ。 109 8九玉(88) 110 9五歩打 *少し首をかしげて歩を打った。▲9一飛が厳しい。 *これは怪しい流れ。今度は後手玉がどうかの勝負になっている。 111 9一飛打 112 9二角打 *ノータイムで角。 *しかし、△9六歩も詰めろではないので、先手に余裕ができた。 *後手勝ちに見られる流れだったが、事件発生を思わせる。 113 8六桂打 *中井六段は危険な筋をスレスレで逃れて反撃をチャンスを得た。次に▲9四桂が▲9二飛成△同玉▲9三歩△同玉▲8二角から詰み筋を見ている。また、△8二玉と飛車を取りに行く筋をけん制している。 *成田さんの右手が盤上に行ったが、引っ込めてほほに当てた。詰めろを掛けるなら△7七金。しかし、この詰めろはいかにも薄い。▲7八金や▲2八龍で受かりそうだ。 *中井六段、ハンカチで口元を押さえて考えている。「中井さん、すごいねえ、この勝負術は」と高橋九段。 *こうなってみると、△7六桂は余分だったろう。保留して、▲9一飛に△9二桂▲8六桂の展開は△7七角▲8九玉△8六角成▲同歩△9六歩と攻められた。 *成田さんは残り37分程度。時刻はまもなく16時30分。手に汗握る戦い。逆転しているのか、後手が残しているのか。成田さんは必死に考える。「△8五馬は▲9四歩で逆に攻めが早くなります」と高橋九段。 *△9六歩▲9四桂△8五香が詰めろ逃れ詰めろかどうか。 114 8八桂成(76) *成り捨てた。 *▲同玉に何があるのか。 *成田さん、残り33分。 115 同 玉(89) 116 7六馬(94) *▲9四歩は△8四玉▲9二飛成に△7七馬から上部脱出の狙い。 *1分将棋だけに簡単にはいかない。 117 7九香打 *落ち着いている。 *「下段の香に力あり」 *△6六馬も▲9八玉で7九香が後手玉の脱出路をなくしている。 118 6六馬(76) *これは逆転の流れ。先手が勝ちそうだ。 119 9八玉(88) 120 9六歩(95) *△9七香からの詰めろだが。 121 9四銀打 *美濃囲いは端が弱い。 *金銀3枚が残っているというのに…。 122 8二玉(93) 123 9三銀打 *これが分かりやすい。△9一玉は▲8二金。 124 同 馬(66) 125 同 銀成(94) *ノータイム。中井六段、読みきったようだ。 126 同 玉(82) 127 8五桂打 128 8四玉(93) 129 7五金打 *▲9三同銀成からパタパタ進み、▲7五金を見て「負けました」と成田さんは投了を告げた。以下△9五玉▲9二飛成までの詰み。 *終局時刻は16時40分。消費時間は中井六段3時間、成田さん2時間29分(チェスクロック使用)。 *見ごたえのある激戦を中井六段が際どく制した。第2局は3月17日(火)にLPSA駒込対局場にて行われる。 *16時45分ごろ、大盤解説会場では中倉宏美二段の昇段免状授与式が行われている。 *しばらくして両対局者は大盤解説会場に移動した。 130 投了 まで129手で先手の勝ち