# ---- Kifu for Windows V6.29 棋譜ファイル ---- 開始日時:2010/03/07 10:00 終了日時:2010/03/07 17:31 棋戦:第2期天河戦三番勝負第2局 持ち時間:3時間 消費時間:128▲180△180 場所:鎌倉古陶美術館 手合割:平手   先手:中井広恵天河 後手:石橋幸緒四段 手数----指手-- *「天河」の称号と賞金100万円を懸けて争われる第2期天河戦3番勝負。中井広恵天河が2連覇を果たすか、挑戦者の石橋幸緒四段が頂点に立つのか。石橋先勝を受けた第2局は「鎌倉古陶美術館」で行われる。入れ替わって中井の先手。持ち時間はチェスクロック使用で各3時間、秒読みは1手60秒。 *本局の記録係はアイリスの鈴木悠子さん、早稲田大学1年生だ。 *9時50分、両者はすでに着座し、静かに開始を待っている。上座の中井は水色と紫の艶やかな和服。下座の石橋はスーツ姿で、LPSAのジャケットを着用している。 *(棋譜・コメント入力=桜木) 1 7六歩(77) *10時となり、立会人の藤森奈津子三段が「それでは時間になりましたので、中井天河の先手で対局を開始してください」と告げると、「お願いしますと」両者一礼。ひと呼吸おいて中井は▲7六歩を着手した。 2 3四歩(33) *石橋はすぐに△3四歩。カメラマン2人がその様子を撮影している。 3 2六歩(27) *▲2六歩は居飛車宣言。第1局は相振り飛車だったが、中井はもともと本格的な居飛車党だ。 *第1局は苦戦と思われた石橋が終盤に鋭い決め手を放って先勝した。石橋は「第1局は終盤珍しくいい形で勝ち切ることができましたので、そのまま流れを絶ってしまわないようにしたい」と語っている。 *ブログ「石橋幸緒のごきげんグラシアス!」のURLは *http://blog.goo.ne.jp/typhoongirl/ 4 4二飛(82) *少考で石橋は△4二飛。女流棋士では珍しいオールラウンダーの石橋、本局は四間飛車に構えた。角道を止めないのが現代流。 5 6八玉(59) *関係者は退室し、対局室は静寂に包まれた。 *対局室は「鎌倉古陶美術館」2階の和室。時折窓の外を横須賀線の電車が通過している。 6 6二玉(51) *石橋は1980年11月25日生まれ。東京都小金井市出身。清水市代女流三冠門下。93年10月、女流2級。99年、初タイトルの女流王将を獲得した。現在はLPSA(日本女子プロ将棋協会)に所属し、理事として運営にもあたっている。タイトル獲得は計3期。2期保持していた女流王位を昨年失冠した。日本将棋連盟主催棋戦優勝は5回。 *石橋の今期の女流公式戦成績は20勝8敗、0.7143。通算成績は309勝162敗、0.6561。 7 7八玉(68) *中井は1969年6月24日生まれ、北海道稚内市出身、故・佐瀬勇次名誉九段門下。1983年奨励会に入会し、2級までのぼる(1990年退会)。1981年女流2級。2002年女流六段。タイトル獲得は女流名人9期、女流王将4期、女流王位3期、倉敷藤花3期の計19期。公式棋戦優勝はレディースオープントーナメント4、鹿島杯3。昨年の第2回大和証券杯女流最強戦で優勝している。LPSA(日本女子プロ将棋協会)の代表理事を務めている。 *今期女流公式戦成績は16勝10敗、0.6154。通算成績は514勝248敗、0.6745。通算対局数、通算勝数で1位。 8 7二玉(62) *石橋は藤森奈津子三段、蛸島彰子五段を降しての予選通過。本戦トーナメントで小野ゆかりアマ女子王位、蛸島彰子五段、船戸陽子二段を降して挑戦権を獲得した。 9 4八銀(39) *中井陣は舟囲い。急戦ならこのまま攻撃形を作る、持久戦を選ぶなら左美濃、居飛車穴熊に発展させる。ただ角がにらみ合ったままなので自由には組めない。 *中井は現在行われている第3回大和証券杯ネット将棋・女流最強戦で決勝進出を果たしている。準決勝第2局の矢内理絵子女王−鈴木環那初段戦は本日7日20時から。中井はその勝者と、21日に2連覇を懸けて戦う。 10 8二玉(72) *振り飛車の石橋陣は△9二香なら穴熊、△7二銀なら美濃囲いだ。穴熊の気配も濃厚。 11 2五歩(26) *飛車先を伸ばす。△4四歩と角道が止まっているなら、迷うことなく△3三角だが。 12 7二銀(71) *お茶を一口飲んでから銀を上がった。着手後、石橋は中井をチラリと見た。 *穴熊でなく美濃囲い。2筋を放置し乱戦辞さずの構え。それでも▲2四歩△同歩▲同飛は△8八角成▲同銀△2二飛で激しい戦いになる。 13 5六歩(57) *昨年の第1期天河戦は、宮城県の中学生成田弥穂さんが女流棋士をなで切りにして決勝3番勝負に登場し、大いに話題を呼んだ。 *注目の中井−成田の3番勝負は中井が2連勝し、第1期の天河位に就いた。 *現在中学3年生の成田さんは受験もあって今期は参加していない。 14 9四歩(93) *△9四歩は懐を広げる大きな一手。寄せにこられたとき金銀3枚違うといわれる。 15 9六歩(97) *中井も端を受けた。舟囲いvs美濃囲いの対抗形は、端攻めが急所になる局面も多い。 16 3五歩(34) *△3五歩は攻めっ気の強い石橋らしい着手。△3二飛〜△3四飛から石田流に組み替える構想だ。最初から△3二飛は▲2二角成〜▲6五角の筋がある。佐藤康光九段や戸辺誠新六段などが採用して注目された順だ。島朗九段の名著「島ノート」にも似た形が紹介されている。 *着手後、石橋は席を立った。 17 6八銀(79) *対局場の「鎌倉古陶美術館」は北鎌倉駅から徒歩2分。 *2007年10月に完成。武骨で素朴な鎌倉時代の陶器が、趣のある建物内に展示されている。 *http://www.kamakobo.com/kotou_top.html 18 3二飛(42) *石橋は「手堅く」石田流に組み上げる作戦。前述の▲2二角成〜▲6五角をどうかいくぐるか、はプロ棋界のテーマにもなった。 19 2二角成(88) *天河戦はタイトル戦形式のLPSA公式棋戦で、中井が天河位保持者。 *ほかに日レス杯が公式棋戦という位置づけで、過去3回の優勝者は中井、中井、石橋だ。 *1dayトーナメント(月1サイクル)がLPSA準公式棋戦といえる。中井が出場12回で優勝8回、準優勝2回。石橋は出場12回で優勝5回、準優勝6回。決勝進出率は1位石橋、2位中井。優勝率は1位中井、2位石橋。両者は1day決勝で6回対戦しており、なぜかすべて中井が制している。 *また女流公式戦(日本将棋連盟主催棋戦)の対戦成績は中井の25勝14敗、最近10局は5勝5敗。 20 同 銀(31) 21 7七銀(68) *角を交換し、中井はじっくり指す方針。穴熊などではバランスが悪く、存分にさばかれる危険がある。 22 3四飛(32) *予定通りの石田流。古来から好形とされている。対局舞台の鎌倉同様、歴史ある構えといえる。 23 6八金(69) *ジリジリと金銀を押し上げて、中段飛車を圧迫していく方針だろう。 *開始から1時間が経過した。消費時間は中井40分、石橋20分。 24 3二金(41) *△5二金左が形だが、角を持ち合っている本局ではバランスが悪い。 25 6六歩(67) *対局場の「鎌倉古陶美術館」では、大盤解説会や指導対局(予約制)、次の一手の出題も予定されている。将棋グッズの販売コーナーもある。 *大盤解説は15時から終局まで。解説は富岡英作八段。聞き手は中倉宏美二段。 26 3三銀(22) *遊び銀を活用する。おとなしく指すなら△4二銀から囲いに参加するルート。先手陣の形によっては△2四歩▲同歩△同飛とぶつける順もあるかもしれない。 27 5七銀(48) *中井は慎重に金銀を進めていく。△3六歩▲同歩△同飛の歩交換は、おとなしく▲3七歩と受けてくれれば得になるが、▲4六銀と出られると飛車が危ない。 28 2四歩(23) *行った! *10分ほどの考慮だった。着手後石橋は席を立った。対局室に残った中井は口もとに手を当てて考えている。 *▲2四同歩△同飛▲2五歩は、△2二飛〜△3四銀で打った歩を狙われる。▲2四同歩△同飛▲同飛△同銀▲4一飛とケンカを買って、攻め合い勝ちできれば話が早いが。以下△2二飛で打った飛車を逮捕されそうだ。 29 7五歩(76) *美濃囲いのコビンを狙う。△2五歩▲同飛△2四飛▲同飛△同銀の強引な飛車交換に、▲7四歩△同歩▲5五角の反撃を見ている。△6四歩とその筋を緩和するのは▲4一角〜▲8五角成が生じる。 *11時50分、石橋が「休憩に入れてください」と記録の鈴木さんに告げた。「もう指しません」の宣言だ。12時までの10分は石橋の考慮時間に足される。持ち時間各3時間のうち消費時間は中井59分、石橋59分。再開は13時から。 *昼食は「けんちん膳」という和食の膳。中井と石橋は同じ部屋での食事だった。「ご飯のお替わりはいかがですか?」と尋ねられた石橋は「いつもはお替わりしますが、対局中に眠くなるといけませんので」と和ませた。 * 30 2五歩(24) *石橋は再開10分前、中井は再開5分ほど前に入室した。 *13時となり立会人の藤森奈津子三段が「それでは対局を再開してください」と告げた。石橋は元気よく「ハイ!」と応じ、すぐに△2五歩を着手した。 31 同 飛(28) *ここで△2四飛▲同飛△同銀は、28手目から▲2四同歩△同飛▲同飛△同銀と進んだ局面に比べて、先手の1手得。▲7五歩という価値の高い手が入ったことになる。 32 2四銀(33) *△2四飛は損、と石橋は銀を出た。 *鎌倉は雨が降っている。静かな対局室に雨音が小さく響く。対局室の前の桜の木からポタポタと雫が滴っている。 33 2八飛(25) *ここは引くしかない。 *石橋は身体を斜めにして脇息にもたれかかっている。中井は背筋を伸ばして口もとに手を当てている。 34 3三桂(21) *石橋は駒をどんどん前に進める。次は△2五銀〜△2四飛と2筋を狙ってくる。中井、どう応じるか。 *石橋が席をはずした。しばらくして戻った後も、中井は考え続けている。 35 4六銀(57) *15分ほどの考慮で右辺に援軍を送る。△2五銀〜△2四飛は▲3五銀があるので指しにくくなった。 *穏やかな流れになると、先手は左辺に位を張ってくる。 36 2五銀(24) *それでも前進。次は△2六歩の押さえがある。▲2六歩には△1四銀の一手だが、自分の飛車先を止めるだけに得かどうか。▲5七角と足す手も気になるところ。 37 2六歩打 *攻め駒の出足を止めることを優先した。▲4六銀と指してあるので、△3六歩が利かない。 38 1四銀(25) *隅に追いやられたが、▲2六歩と打たせたので腹は立たないだろう。 39 6五歩(66) *少しずつ陣地を広げていく。中井は右辺は軽くして駒を蓄え、左辺の玉頭の厚みで仕留める構想。石橋は薄くなった右辺でポイントを稼ぎ、上ずった先手陣を横から仕留めたい。 *消費時間は中井1時間33分、石橋1時間17分。間もなく14時。 *手番の石橋は鋭い視線で盤をにらんでいる。中井は気を受け流すように横を向き外の景色を見ている。 *△4四歩〜△4五歩と銀を追うところか。▲4六銀がいなくなれば△2五歩▲同歩△同銀▲2六歩△3六歩と前進できる。しかし△4四歩に▲1六角でどうか。以下△2五歩▲同歩△4五歩▲2四歩のとき歩切れで角筋が受けにくい。 40 8四歩(83) *△8四歩は15分の考慮。空気穴を開けた。後の▲7四歩のコビン攻めに対してグッと耐久力が増した。 *ただ△8三銀は▲4一角があるので銀冠には組めない。 41 6七金(68) *ジワリと。▲7六銀と上がったときに離れ駒にならないようにし、▲7六銀〜▲7七桂型を作ることがひとつ。△5六角を消して▲5五歩を可能にしたのがもうひとつの狙い。▲5五歩から▲5六角と据えられれば、以下△2四飛▲3五銀と一気に後手攻撃陣の連携を崩せる。 *中井が徐々に押さえ込みにきている。石橋陣は動かせる駒が少なく、息苦さを感じる。 *「中井さんの好きそうな展開ですね」との声。 42 3六歩(35) *△3六歩はピシっと高い駒音だった。ゆっくりはできない、と石橋は動いた。 *▲3六同歩△同飛▲3五歩の飛車捕獲作戦は、△3九角と打たれてしびれそうだ。 43 同 歩(37) 44 同 飛(34) *4九金型を生かして▲3七歩を打たずにすませたいが、押さえ込みの網が破れたら先手陣は空中分解してしまう。慎重に進める必要がある。 45 7四歩(75) *中井は「ふー」と息をはいて7筋を突き出した。△7四同飛とは取れないタイミングで、筋のよい中井らしい。△7四同歩なら▲3七歩△3四飛▲3五銀で王手飛車の筋がある。 *だが手番は石橋。何があっておかしくない。△3九角や△2七歩が成立するか。 *石橋が盤に被さるようにして考えている。 46 3九角打 *石橋の手が伸び、深いところに角を打ち込んだ。▲3九同金△同飛成はディフェンスの裏に回り込まれた格好で崩壊する。 47 6八飛(28) *6八へ。 48 7五角成(39) *後手は馬ができて、押さえ込まれる心配はなくなった。飛車を追ったので△2六飛が生じたのも大きい。 *ただ攻め合いになれば、△1四銀は取り残されるだろう。 49 7三歩成(74) 50 同 桂(81) *反発を秘めた応手。守備桂も攻めに使うつもりだ。 *記録の鈴木さんが「中井先生、残り1時間です」と告げ、中井は「ハイ」と応じた。 *石橋は1時間12分残している。 *形は▲6六銀。飛車筋を通して▲7六金も魅力。 51 6六銀(77) *形よく銀。△7四馬▲7五歩と馬を追いつつ拠点を確保できそうだ。 *中井が席を立ち、ひとりになった石橋は苦しげに「にゃにゃにゃ…」とつぶやいた。 52 7四馬(75) *△8五馬は▲7七桂とされて損。 *(1)位の確保は▲7五歩で、△8三馬に▲3五角で飛車を攻める。(2)一気に追い込むなら▲7六金として▲7五銀〜▲7四歩を狙う順もあるかもしれない。 *「△1四銀落ちはつらいですね」の声。 53 7五歩打 *ガッチリと厚みを主張。 54 8三馬(74) *さあ、ここでもうひと押し。 *▲7四角と馬を消しにいく手が魅力。△9三馬の辛抱なら▲6四歩△6二金▲5五銀右と駒を集めてのなだれ込みを狙う。 55 2八飛(68) *じっと。△2六飛を消して次はやはり▲3五歩がある。 56 3四飛(36) *飛車を戻って7四を補強し簡単には崩れない。石橋はしばらく辛抱して駒を働かせたい。例として△6四歩▲同歩△6五歩▲7七銀△6四飛や、△2五歩▲同歩△同銀など。長引けば馬の力が生きてくる。 *残り時間は中井40分、石橋1時間5分。 57 8八玉(78) *力のこもった一手。玉を深く囲いつつ、▲7八飛の転回を見せている。 *富岡英作八段と中倉宏美二段による現地大盤解説会が始まった。 *解説会動画のURLはhttp://www.ustream.tv/channel/lpsa2 *「最近の大発見は、本局のように振り飛車なのに角道を止めなくていいんだ!ということなんです」と富岡八段。 *「中井さんは居飛車党で正統派、石橋さんは力戦好きで才能派というイメージですよね」と富岡八段。 *石橋の考慮中に記録の鈴木さんが「石橋先生残り1時間です」と告げた。中井は残り35分。 58 8一玉(82) *粘りの姿勢。玉頭戦に備えて戦場から一歩遠ざかった。 *「いずれ7四が争点になりますので、遠ざかったのですね。△7一金とすればさらに堅くなります」と富岡八段。 59 7八飛(28) *主砲を据える。次に▲6四歩△同飛▲5五銀右△3四飛▲6四歩と強引に飛筋を消して▲7四歩もありそうだ。 *「一度▲2八飛と指してまた▲7八飛。中井さんは老獪ですね」と富岡八段。 60 2三銀(14) *端の銀を使いながら3二金にヒモをつけた。苦しめの局面だが形を整えて頑張る。 61 5五銀(46) *力をためる。次は▲6四歩〜▲7四歩。△5四歩と追っても▲4六銀でやはり飛車の利きが止まってしまう。 *盤側の記者と記録係の鈴木さんがコホコホと咳をしていたところ、石橋が手持ちののど飴を手渡してくれた。 62 9五歩(94) *歩突きで勝負。 *「ここに手が行くのは石橋さんらしいですね。私なら、△7一金かな」と富岡八段。 63 同 歩(96) *中井は落ち着いて応じる。 64 8五桂(73) *負担の桂を逃げつつ、プレッシャーをかける。7、9筋ともに歩が利くので悩ましい。 *3番勝負第1局も石橋は苦しめの将棋をピッタリついていき、最後の決め手に結びつけた。 *残り時間は中井18分、石橋35分。 65 8六歩(87) *催促。急所の桂を残して攻め合うよりも、攻めさせた方が速いとの判断。 66 9八歩打 67 同 香(99) 68 9七歩打 69 同 桂(89) *「▲9七同香が普通かと思いました。▲同桂は怖くないですか?」と富岡八段。 70 9六歩打 *△9七同桂成は▲同香でキズがなくなる。▲8五歩には△9七歩成▲同香△8五歩と進め、飛車の利きを通しつつ、イヤミを残しながら攻める。 71 8五桂(97) *残りは中井14分、石橋31分。 72 同 歩(84) *▲9六香は△8四桂、▲8五同歩は△8六桂がうるさい。手の入れ方が難しい。 73 9六香(98) 74 8六歩(85) *玉頭に嫌味な歩が伸びてきた。 75 8五歩打 *△8四桂と△8四飛の両方を防ぐ。4枚の歩が並び、先手陣は広い。面倒を見て▲6四歩が回るのを待つ姿勢だ。 *石橋の残り時間は24分、中井は12分。 *石橋は駒を渡すと反動がきつい。といって緩い手は本格的に攻められる。石橋は頭に手をやって考えている。 76 8四桂打 *歩頭に桂! 記者は一瞬、何を指されたのか分からなかった。打ったばかりの歩の上なので盲点になる。▲8四同歩は△同飛と主砲がくる。以下▲7九桂と受けても△8七歩成▲同桂△8六歩。といって次は△9六桂が王手だ。 *中井の残り時間は10分を切った。石橋は残り14分。 77 同 歩(85) *「取ったの? △9六桂と取らせて▲7七玉の形がなかなか寄らない、と思ったのですが」と富岡八段。 78 同 飛(34) *△8四同飛はノータイム。後手の駒が急所に集まってきた。 *「厳しいです。これを受けきったら強い。本局最大の見せ場ですね」と富岡八段。 79 7六角打 *角で受ける。次に▲8五歩と押さえられれば。 *「▲8五歩△同飛▲7六角は△8四馬が気になったのでしょうね」と富岡八段。 80 8七歩成(86) 81 同 角(76) 82 同 飛成(84) *ズバッと。 83 同 玉(88) 84 6九角打 *準王手飛車。次はすぐ飛車を取るのではなく、一発△8六歩とたたいてくる。 *ここで中井は持ち時間を使い切り、1手1分の秒読みに入った。 *「まだまだ大変ですよ」と富岡八段。 85 7七金(67) 86 7六歩打 87 同 玉(87) 88 7八角成(69) 89 同 金(77) 90 9九飛打 *金香両取りで反撃。両方を受ける手はない。 91 5八金(49) 92 9六飛成(99) *駒損を回復しながらの王手。大迫力だ。 93 6七玉(76) *玉を引いて中井玉もまだまだ粘りが利きそうだ。 94 8六歩打 *切れない攻めを目指す。こうなってみると後手玉は馬が厚く、なかなか手がつかない。 * *※歩が利かないこの瞬間が▲8四歩△同馬▲7四桂のチャンスだった。 95 5七玉(67) 96 8七歩成(86) 97 6七金(78) *「中井さんは秒読みですか。まだまだ難しいですよ」と富岡八段。 98 8六と(87) *しつこく金駒を狙っていく。中井への秒読みが続いている。石橋は残り7分ほど。 99 8四歩打 *反撃の一発。 100 同 馬(83) 101 7四桂打 *次は▲8二飛が王手馬取り。 102 8二歩打 *※この歩が意外なほど頑丈だった。 103 6四歩(65) *微妙な歩突き。 *「この終盤で△6四同歩と取る人はいませんので、攻め合いになります」と富岡八段。 104 7六と(86) *※「と金が使えて難しくなったようですね」と富岡八段。 105 同 金(67) 106 同 龍(96) 107 6三歩成(64) 108 同 銀(72) 109 4一飛打 *金取りの飛車打ち。△5一金なら▲8三歩で寄り。と思ったら▲8三歩に△7四銀があって簡単ではなかった。 *石橋は残り3分。 *△7一金には▲6二歩と攻めるようだ。 *「△5一金打▲1一飛成△3一歩かな。石橋さんがおもしろくなったような気もしますね」と富岡八段。 *石橋も持ち時間を使い切って両者1分の秒読みとなった。 110 4五桂(33) *一発王手。上か下か、応手を聞く。 111 4六玉(57) 112 5一金打 *金を拝み打った。 113 6二歩打 *中井は秒読みの中、首を傾げながら歩を打つ。石橋も頭を抱えた。 114 4一金(51) 115 6一歩成(62) *中井は金を取るしかない。 116 7四銀(63) *桂をはずす。石橋は中腰になって伸びをした。 117 同 歩(75) 118 3八飛打 *△3八飛は△3四桂▲4五玉△4四香以下王手が続く。「詰めろか? 詰めろですね」と富岡八段。 119 6三角打 *攻防に利かす王手。7四と4五に利いている。 120 7二歩打 *まだ先手玉の詰めろは解除されていないようだ。 121 3七歩打 *飛車の利きを遮断して頑張る。 122 5八飛成(38) *力強い手つきで金を取った。 * *※次は「△5六龍▲同玉△6六馬▲同銀△5五金と追って詰みです」と石橋。 123 4五角成(63) 124 5四桂打 *馬の利きを止めつつの王手。攻防手。 * *※「この手でハッキリ負けです」と中井。 125 3六玉(46) 126 3三香打 *追撃の王手。▲3五桂は△3四銀が厳しい。 * 127 2七玉(36) *合駒せずに引いた。しかし△7九龍が厳しそうだ。 128 3四銀(23) *ここで中井が駒台に手を置き「負けました」と告げた。馬を逃げたら△7九龍が詰めろで一手一手。後手玉にうまい詰めろが掛からない。終局時刻は17時31分。 *石橋が3番勝負を2連勝で制し第2期の天河位に就いた。両対局者は大盤解説場に移動した。 *「途中まではうまく指せていたと思ったのですが…」と中井。 *「中井代表との番勝負は久しぶりでした。この3番勝負は良くも悪くも自分の力を出せるようにと頑張りました。今後もタイトル目指して頑張っていきたいと思います。みなさま応援よろしくお願いします」と石橋はあいさつした。 129 投了 まで128手で後手の勝ち